入園前の お友だちづくり

お話 渡辺弥生先生

1~2才になると、そろそろ気になるのが「お友だち」のこと。いろんなお友だちと遊んでほしいのに、現実はなかなか親から離れなかったり、なかよく遊べなかったり……。幼稚園入園前の子どもたちのお友だちづきあいについて、発達心理学がご専門の渡辺弥生先生にお話をうかがいました。

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友だちづくりは急がなくても大丈夫。
まずは親子の信頼関係をしっかり作って。

 最近は、子どもが1才、2才のころから「早くお友だちを作ってあげなければ」と考えるお母さんが多いようですね。でも発達的にいうと、子どもが周りの子どもたちとやりとりをしながら遊べるようになるのはおよそ3~4才くらいからのことなので、1~2才というのは、実はまだそれほど友だちづくりを意識する必要はない年代だといえます。

 人とコミュニケーションする力というものは、小さいときから少しずつつちかわれていくものですが、そういう力を育てるために必要なのは、愛着のある人(お母さんなど)との間に、しっかりとした信頼関係をはぐくむことです。

 「困ったことがあっても、お母さんがいるから大丈夫」という絶対的な安心感を心の中に獲得できた子は、自信を持って外の世界へと踏み出して行けます。

「もう何才だからお友だちを」ではなく、子どもの様子をよく観察してみて「子ども自身がほかの子に興味を示しているようなら、そろそろお友達のいるところに連れて行ってみよう」くらいに考えておくと、お母さんもあせらずにすむかもしれませんね。

親もいっしょに遊びながら、関わり方のお手本を見せてあげましょう

 1~2才のころのお友だちとのかかわりは具体的にはどんな様子かというと、まず1才くらいになると、同じくらいの子どもが遊んでいるのをじっと見るようになります。でも、子どもは別に「自分も入りたいな」と思っているわけでもないので、「いっしょに遊ばせなくちゃ」などとあせる必要はありません。「いろんな子がいるね」「おもしろそうだね」などと話しかけながら、お母さんもいっしょにながめていればいいでしょう。

 2才くらいになると、自分も同じところで遊びたがることも出てきます。ただ、まだ子ども同士で会話をしたりはできないので、できればお母さんも子どもたちの間に入っていっしょに遊びながら、「大きなお山だね」「バケツに砂がいっぱい入ってるね」と会話をつないだり、遊びを盛り上げたりしてあげるといいですね。

 仲間に入れてほしいときは「入れてね」という、友だちのおもちゃを使いたいときは「貸してね」というといった遊びのルールも、お母さんがお手本を見せてあげることで子どもは自然に覚えていけるでしょう。

(まとめ/編集部)

こんなときはどうしたら?
お友だちづきあいのありがちトラブル

ごめんねが言えない

周囲の目を気にするあまり、「ここで、どうしても本人にごめんねと言わせなくちゃ」と思うと、子どもも親もつらくなってしまいます。本人が言えないときは、お母さんがかわりに「ごめんね」とあやまってしまいましょう。お母さんの姿を見ながら、子どもは「あ、こういうときはごめんねと言うんだな」ということを学んでいきますよ。

おもちゃの取り合い

2才ごろになると「これは自分のもの」という意識が出てくるので、物の取り合いのトラブルもふえます。それは順調に成長している証拠なので、まずは「そうだね、これは○○ちゃんのものだよね」と、その子の気持ちを受け止めてあげたいですね。「貸してあげる」とか「じゅんばんこで使う」は3才くらいにならないとなかなか理解できないので、もめごとが収まらなければ、「じゃ、あっちで遊んでこようか」と気分転換を図るのもおすすめです。

渡辺 弥生

法政大学文学部教授。専門は、発達心理学、発達臨床心理学、等。育児不安のお母さんたちへのカウンセリング、家庭教育講座などの講師、幼稚園や学校の子どもたちを対象に、思いやりの育成や、ソーシャルスキル教育などにも精力的に取り組んでいる。『親子のためのソーシャルスキル』(サイエンス社)『ウチの子、最近、手に負えない』(すばる舎)等。

取材・文/中島恵理子