自分で考えて行動できる子に育てたい!

「親業トレーニング」でコミュニケーション力アップ!

お話 今井真理子先生

わが子はどのように育ってほしいですか? 「自分の頭で考え、行動し、一人で生きていけるたくましさを身につけて欲しい」。そう願う親も多いのではないでしょうか。そのためには、親子の普段の会話や接し方が大切です。わかりあえる親子関係、子どものやる気を伸ばす具体的なコミュニケーションについて、親業訓練協会の今井真理子先生にお聞きしました。

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子どもの気持ちを確認する

子どもは成長とともに自我が芽生え、自己主張が始まります。と同時に親子の衝突も増えていきますよね。「ほらほら、こうしなさい」「これはダメよ!」とつい先回りの言葉を発してしまいがちです。でも残念ながら、子どもは「ママは、自分のことを思ってそう言ってくれている」とは思ってくれません。うるさいから仕方なく、または怖いから言うことを聞くのであって、しつけの本質は理解していないのです。

「~したらダメ」「こうしなさい」という命令や指示。「こうしたらどう?」という提案。ほかに、子どもの思いを勝手に解釈したり、理詰めで講義したり、何をすべきか説教したり…。こうした親のとりがちな対応は、子どもが「理解してもらえなかった」と不満に感じたり、自信をなくすことにつながり、効果的な方法とはいえません。

では、どうしたらいいのでしょうか。たとえば、転んで「痛いよ」と泣いていたら、「そう、痛かったのね」と、子どもの気持ちを汲んで話します。「もう大丈夫」や「ガマン、ガマン」は、励ましや命令の言葉であり、寄り添う言葉ではありません。「転んで痛かったんだね」と子どもの気持ちを言葉にして確認することで、子どもは「僕の気持ちをわかってくれた」とほっとします。安心と落ち着きを取り戻すので、それ以上訴える必要がなくなるのです。その先は、子ども自身に任せましょう。ここで、自分の頭で考え行動する力が身につきます。

少し意識するだけで言葉のかけ方が変わってきますよ。

「わたしメッセージ」を発信

ゴードンメソッドの基本は、「聞くこと」と「話すこと」、そして「対立を解くこと」です。子どもの言葉に耳を傾けることで、子どもは心を開き、本当の気持ちを話すようになります。そして、親も自分の気持ちや考えを子どもに伝えることが大切。

実は、子どもがお腹にいるときから、ママは赤ちゃんと会話をすることもできるのです。赤ちゃんに蹴飛ばされたら、「お腹を蹴られると痛いなー。」と自分の思いを伝えたり、「もうお腹の中が狭くなっちゃったのかな?」わが子の気持ちに寄りそうこともできるわけです。

部屋におもちゃが散乱しているとき、「早く片付けなさい!」と怒るのではなく、「おもちゃが出ていると、ママはお掃除できなくて困っちゃうな」というようにママである私がどう感じ、どう困っているかを具体的に伝えます。親業ではこれを「わたしメッセージ」と呼んでいるのですが、「(あなたが)片付けなさい」ではなく、「(私が)困る」「助かるわ」「嬉しい」「悲しいな」など、主語をあなた(子ども)ではなく、私(ママ)に代えます。本音を素直に話すことで、子どもは親の気持ちがわかり、自主的、協力的に、自分で考えて行動することができるようになります。

子どもの意見を尊重する

とはいえ、親子で意見が対立して、折り合いがつかないことも多いでしょう、その場合も、親が一方的に意見を押しつけたり、子どものいいなりになるのではなく、お互いに納得できるような話し合いで解決を。

親の意見が絶対に正しいわけでもありませんし、もしかしたら親の思い込みかもしれません。子どもは小さくても、自分で考える力を持っています。子どもから思わぬ面白い提案が出ることもありますよ。

何もかもサポートするのではなく、子ども自身が判断し、解決できるよう心がけて。親子関係が良好であれば、子どもは自分の意見を持って行動し、人の話をちゃんと聞き、思いやりの心も育っていきますよ。

「ゴードンメソッドとは…」

臨床心理学博士トマス・ゴードン氏(シカゴ大学・同大学院博士課程修了)による、互いの気持ちを通い合わせ、相手の自立を助け、共に成長していくことを目的とした具体的なコミュニケーション法。

子育てのヒント

  • 急いでいる時は、つい命令口調になりがちですよね。でも子どもは、なぜ急がなければいけないのか、なぜ禁止されるのかわからないことがあります。夜寝る前など、落ち着いた時間に、予防的にゆっくり理由を話すと、きちんと理解して行動できます。
  • 環境を変えるのも方法です。たとえばテレビばかり見て食事が進まないという場合は、テレビの位置や向きを変えたり、TVとテーブルの間にパーテーションを置くなど、環境を工夫することで、問題やトラブルがなくなる工夫もできます。

今井真理子 (いまいまりこ) Mariko Imai

親業訓練協会企画室シニアアクティベーター、シニアインストラクター。ふれあいコミュニケーションリーダー1級。3人の育児をする中で、米国の臨床心理学者トマス・ゴードン博士が作り上げた「ゴードンメソッド」と出会い、「親業インストラクター」の資格を取得する。現在、全国各地の講座・講演で、親子関係をより良くする効果的なコミュニケーションスキルを提案している。

取材・文/渡辺里佳