「脳育て」は、普段の生活の中で簡単にできる!

お話 成田奈緒子先生

この世に誕生して間もない赤ちゃんから幼児期にかけては、脳の土台を作る大切な時期。毎日の暮らしの中にある基本的な生活リズムが脳を刺激し、自分で考えて行動できる子を育てていきます。「脳育ては難しくない。普段の暮らしの中でできることばかり」という、小児科医の成田奈緒子先生にお聞きしました。

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五感からの刺激が脳の土台をつくる

人間の脳は、生まれてからずっと育ち続けるものですが、とくに勢いよく育つのが生まれてからの5年間です。周囲のあらゆる刺激をどんどん取り入れ、情報を蓄積しながら発達していきます。

早寝早起きをして朝日を浴びることも脳によい刺激を与えます。朝起きたらカーテンを開け、太陽の光を浴びて「おはよう、○○ちゃん」と声をかける。抱っこしておっぱいをあげる。布団の上で親子でじゃれあう。手遊びや歌を歌う。散歩して、花や小動物に話しかけるなど、実際に見る・聞く・さわる…などの五感からの刺激をたくさん取り入れてあげることで、脳の根っこの部分が育っていきます。

大人社会が24時間型になっても、子どもの夜更かしはNG。おひさまのリズム(朝は明るく、夜は暗くという刺激)を毎日規則正しく与える生活リズムは、脳の土台を作る上でとても大切なことです。

「ママミルク、ちょうだい」
要求はできるだけ文になる言葉を引き出す

次に大切なのが「言葉を引き出す刺激」です。言葉は人間だけが持つとされる高度な脳の機能のひとつ。言葉の刺激によって、考える力の基礎を作っていきます。

子どもが「ジュース」と言っただけで、さっと飲み物を出してあげたり、「○○してほしい」という前に、親が先回りして対応するのは、じつは脳育てにはマイナス。自分で考えない、言葉を出さない脳が育ってしまいます。

2歳ごろになると、「ジュース、ちょうだい」と、2つの単語をつなげて話せるようになりますが、この時こそがチャンス。できるだけ文に近い言葉が出るように促したり、言葉になるのを待ちましょう。親は先回りせずに、じっくり待つのがポイントです。

絵本を読んであげた後なども、たとえば、桃太郎のお話なら、「桃はどこから流れて来たの?」「どんな動物さんが出てきたかな?」というように、子どもと会話しながら、「自分の脳を使って考える」という働きかけをするのも、脳育てにはとてもいいですね。

親は笑顔で「大丈夫だよ」の声かけを。

前向きで柔軟な心、打たれ強い心を作るためには、親の「大丈夫だよ」「それでいいんだよ」という言葉かけが大切。脳と心はつながっているので、親からありのままを認められることで、子どもは自信がつき、簡単には折れない心や、自分のことを認められる脳が育っていきます。将来、困難なことに立ち向かったときに、「まぁいいか」「自分って大丈夫」と自ら思えるようになっていくでしょう。

「脳育て」というと難しく聞こえますが、親が「こうしたい」「こうせねば」とあれこれ考えるのではなく、普段の暮らしの中でできることばかりです。

早い時期から特別なことをさせたり、高価な知育玩具を与えるよりも、できれば5歳位までは親子でコミュニケーションをとりながら楽しく育児をする。子ども同士が自由に遊ぶ時間をつくる。それだけで脳は成長していくものです。

このことを理解していただければ、親にとっても子育てがぐんとラクになり、楽しいものになるのではないでしょうか。

まとめ/編集部

成田奈緒子 Naoko Narita

医学博士。日本小児科学会認定小児科専門医。文教大学教育学部特別支援教育専修教授。不登校、ニートなどに悩む家庭を、きめ細かく具体的なサポートを行う傍ら、子どもの生活習慣を科学的に考える育児、教育への提言を発信している。「5歳までに決まる! 脳の鍛え方・育て方」(すばる舎)、「小学生ママのしんぱい百科」(小学館)、「脳の進化で子どもが育つ」(芽ばえ社)。「赤ちゃんの脳とこころを育てる親子レッスン」(ブティック社・監修)など著書多数。

成田奈緒子先生の本の紹介

詳しく知りたい方は、こちらの本も参考にしてください。
「5歳までに決まる! 脳の鍛え方・育て方」(すばる舎)

取材・文/渡辺里佳