子どもを虫歯から守りたい!
そのために知っておきたいこと、家庭でできること

お話 内川喜盛先生

「子どもの歯は大人に比べて、とても虫歯になりやすい」と聞くと、心配になりますよね。正しい虫歯予防は、まず「虫歯がなぜできるのか」をきちんと知ることから。毎日のケアに役立つ情報も含めて、小児歯科のドクターにやさしく解説していただきます。

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虫歯ってどうしてできるの?

虫歯ができる原因は歯の表面についた「プラーク」

みなさんは、「プラーク」という言葉を聞いたことがありますか? プラークとは、口の中の細菌が歯にくっついてつくるかたまり(歯垢)のことです。プラークの中の細菌は、炭水化物などの糖分を取り込んで「酸」を作ります。その酸が少しずつ歯にしみこむと、カルシウムやリンが溶け出します。これを「歯の脱灰」といいます。この状態がすすんで、歯に穴が開いてしまうのが「虫歯」なのです。

でも、人間の体はうまくできていて、虫歯になるのを阻止するしくみもちゃんと備わっています。それが唾液の持つ「再石灰」パワーです。唾液は細菌の出す酸を中和し、一度溶けだしたリンやカルシウムを再び歯に押し戻すという働きをしてくれます。私たちの歯は、食べるたびに脱灰と再石灰化をくり返していて、そのバランスがくずれたときに虫歯になってしまうのです。

虫歯予防の基本は?

ポイント1 ていねいな歯みがき

最近はキシリトールのガムやタブレットなど虫歯対策の商品もいろいろ開発されていますが、虫歯予防のいちばんの基本は昔も今も「ていねいな歯みがきで、しっかりとプラークを落とすこと」です。

プラークは時間がたつと厚みを増して落としにくくなるので、少なくとも1日1回は時間をかけてていねいに歯みがきをしましょう。たとえば、忙しい朝は自分みがきだけ、夜は自分みがきのあとに、お母さんがしっかりと仕上げみがきをするというパターンなら、比較的無理なく続けられるのではないでしょうか。なお、乳歯列が完成する3才ころからは、歯ブラシみがきに加えてフロスも使うことをおすすめします。

ポイント2 規則正しい食生活

2つめのポイントは、「食べない時間を作ること」です。ダラダラ、ちょこちょこと食べていると、細菌が酸を出して歯を溶かす時間が長くなるため、唾液による修復作業が追いつかなくなります。その結果、虫歯になりやすくなるのです。食事やおやつは時間を決めて食べることがとても大切。幼児の場合は、1日3回の食事とおやつ1回を基本にして、食べない時間をしっかり作りましょう。

ていねいな歯みがきと正しい食生活は、一生の宝物です。小さいうちにこの2つを身につけてしまえば、この先、虫歯になるリスクはぐんと減らせるので、ぜひ親子で頑張りましょう。

先生に質問!

歯みがき粉は必要?

歯みがき粉はきれいにみがくためというより、虫歯予防効果を持つフッ素を日常的に取り込むためのもの。歯が生え始めたころから、できるだけフッ素の入った歯みがき粉を使うことをおすすめします。使う量は歯ブラシの毛先の数本にちょっとつける程度で十分。またはブラッシングのあと、ごく少量の歯みがき粉を直接歯にまぶしてもいいでしょう。

歯みがきが嫌いな子はどうすれば?

虫歯をつくらないためには歯みがきに慣れてもらうしかないので、お母さんはとにかく笑顔で、やさしく話しかけたり歯みがきの歌を歌うなどして、楽しい時間になるように頑張ってみてください。ちなみに、小児歯科の外来ではいろいろな味の歯みがき粉を用意して、「今日はどれにする?」とお子さんに選んでもらっています。そして、歯みがきが終わったら「がんばったね」「きれいになったね」とほめてあげましょう。

砂糖は食べさせないほうがいいの?

虫歯菌は砂糖と出会うとグルカンというネバネバ物質を出して、強力に歯にくっつきプラークを作る性質があります。同じ甘いものでも果物(果糖)やキシリトールなどではこういう現象は起こりません。このことから、「虫歯予防のために、なるべく砂糖はひかえて」といわれるのです。とはいえ、ふだんからきちんとケアをしていれば、たまのイベントや外出時などに砂糖を使ったお菓子やジュースを楽しむくらいは問題ないでしょう。

虫歯菌は大人からうつるって本当?

おなかの赤ちゃんの口の中には虫歯菌はいません。生後、主にお母さんなど身近な人を通して感染します。でも、歯みがきや食生活に注意して虫歯菌を定着させないようにしていれば、極端に心配する必要はありません。たとえば、お母さんが味見したスプーンで食べさせたりするくらいは気にしなくて大丈夫。ただし、「かみ与え」は衛生観念上もよくないので避けましょう。

内川 喜盛(うちかわ よしもり)

日本歯科大学附属病院小児歯科 教授。日本歯科大学附属病院副院長。日本歯科大学歯学部卒。日本歯科大学大学院歯学研究科修了(歯学博士)。「虫歯予防のためには、家庭でのケアに加えて、歯科医院での定期検診も受けると安心です。かかりつけ医には、子どもの歯の専門医である小児歯科をおすすめします」

取材・文/中島恵理子