親子バトルにも、子どもの言いなりにもならない

子どもの「ダダこね」にどうつきあう?

お話 阿部優美先生

「ごはんの時間だから、もう帰ろう」「ヤダー! まだ遊ぶ」、「おやつは1つだけよ」「ヤダヤダ! もっと食べたい」……。「自分はこうしたい!」という気持ちは、自立した人生を歩むための原動力。子どものダダこねを上手に受け止め、親子で前向きに乗り越える方法を探ります。

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ダダこねっ子の心の中は?

「ダダこね」は自己主張と自己コントロールの練習

子どもはいずれ社会に出ていきます。幼稚園などの集団に入ったりすると、そこでは、自分を主張したり、相手の主張を受け入れたり、自分をコントロールしながら、まわりと折り合っていかなければなりません。ダダこねが激しくなる2~3歳は、その準備期間として、ママを相手に、自分の気持ちをぶつけて、折り合いをつけていく練習をしているのです。

大好きなママに「こうしようね」と言われ、「ウン」と言いたい気持ちもあるのですが、どうにも自分のやりたい気持ちがゆずれず、自分を通そうとするヤダヤダの方だけが表面化します。でもヤダヤダに十分つきあってもらえると、「ウン」と言いたい気持ちも出て来れます。

たとえば大人でも、失恋をしたときなど、「しかたない」と現実を受け入れる気持ちはあっても、どうにもおさまらない気持ちがもう一方にあるはずです。そのどうにもならない気持ちを、誰かに聞いてもらったりしながら、泣いて泣いて、泣くことで未練を断ち切って、前に進んで行きます。

子どもも同じで、毎日が失恋の連続です。ママのおっぱいに失恋、お友だちのおもちゃに失恋、お菓子に失恋、公園に失恋。失恋のつらさをママに聞いてもらいながら、泣きながら、前に進んでもらいましょう。そうやって、思い通りにならないことがあっても、自分の気持ちをコントロールできるようになっていくのです。

ダダこね対応の「きほんのき」は?

言葉で共感しながら、体でも受け止める

まず、子どもの主張には、しっかり耳を傾けましょう。「もっと遊びたい」「もっとお菓子食べたい」という要求には、「遊びたいんだね」「食べたいんだね」と、その「気持ち」は受け止めたうえで、できない理由を簡潔に伝えて、「だから、こうしようね」という親の言い分を受け入れてもらいます。そうやって生活のルールや社会のルールを身につけていくのを助け、導くやりとりが「しつけ」であり、親の役目なのです。

もちろん、子どもは言い聞かせても、すんなり「わかったよ」なんて言ってくれません。子どものヤダヤダが始まったら、もう子どもは「頭ではわかっても、心がどうにもならない状態」です。ワーワー泣いたりジタバタして、ママに気持ちをぶつけてきますから、しっかり受け止めましょう。

「ママ嫌い!」「あっち行け!」などと言ったりしても、本当はママを否定したり、困らせたいわけではなく、どうにもならない気持ちに身もだえしているだけです。

ママをぶったり蹴ったり体ごとぶつけてくる場合は、子どもを加害者にしないように子どもの手を握ってぶつのを止めたり、体ごと抱き止めたりしてママが嫌だと思うことはさせないで、心の中のモヤモヤをママの体になすりつけるように発散してもらいましょう。思い切りヤダヤダが言えると、納得してママの言い分を受け入れる気持ちの余裕が生まれます。

ママに言葉や体で受け止めてもらうと、子どもは「自分の気持ちを受け止めてもらえた」という安心感やママへの信頼感が深まり、自分の気持ちのコントロールの練習にもなり、かつ乗り越えられた自分としての自信にもつながっていきます。そう考えると、「うんうん、いっぱい泣いていいよ」「ダダこねはチャンス!」と思えてきませんか?

うまくいかないときはどうしたら?

時には距離を置いて見守るのもアリ

ダダこね対応の正解は、一つだけではありません。外出先などでは、とにかく抱っこしてその場を立ち去るのが現実ベストかもしれませんし、ジタバタしても大丈夫な状況なら、「わかった。じゃ、好きなだけ気持ちよくダダこねしなさい」と、しばらく見守るのもアリだと思います。

もし、ママ自身が「もう無理! 付き合えない!」といっぱいいっぱいになってしまったときは、ダダこねする子どものとなりに寝転がって、「お母さんもヤダヤダ!」といっしょになってジタバタしてみるのもオススメです。「ヤダヤダヤダ……」と思いきり発散したあと、「ああ、ダダこねしてスッキリしたね」と笑い合う。そんな関係が作れたら、親も子も煮詰まらずにすみそうですね。

阿部 優美(あべ・ゆみ)

日本抱っこ法協会公認ホルダー、言語聴覚士。「子育てを一から見直すプロジェクト」メンバー。子育てに悩むお母さんの相談を中心に、3歳児健診、保育園の巡回相談などに携わるほか、子育て関係の講演、保育・福祉に携わる職員研修など精力的に活躍中。心の相談室『とうげのちゃや』(東京・府中市)主宰。

『ダダこね育ちのすすめ』

ダダこねについて、よりくわしく知りたい方へ。購入方法は、日本抱っこ法協会ホームページをご覧ください。

取材・文/中島恵理子