うちの子は大丈夫かな? 親がしてあげられることは?

「自分が好き!」と言える子に育てたい!

お話 坂本玲子先生

国際調査によると、日本の子どもは「自分に自信がない」「自己肯定感が低い子」が多いのだとか。そして、「自分が好き!」という気持ちを育てるポイントは、実は日々の親子のかかわりの中にもあるのだそう。子育て中のお母さん、そしてお父さんにもぜひ知ってほしいお役立ちアドバイスをお届けします。

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自信のベースは「愛されている」の安心感

人間の赤ちゃんは、まだ自分では何もできない状態で生まれてきます。そして、泣けばおっぱいを飲ませてもらったり、おむつを替えてもらったり、と愛情を込めてお世話をしてもらうという経験を通じて、「自分は愛されている」「自分は大事な存在なんだ」という感覚を少しずつはぐくんでいきます。この「基本的信頼感」をベースにして、子どもは少しずつ自分の世界を広げていきます。

お母さんの「いいね!」が子どもの自信を育てます

1才半くらいになると、子どもはさかんに自己主張を始めるようになります。見るものすべてに興味津々、何でも自分でやってみたくてワクワク。この時期に大事なことは、子どもの興味ややる気を上手に受けとめて、いっしょになっておもしろがったり、「できたね」と喜んであげることです。

子どもが何かに興味を持ったら、「あなたはそれがやりたいんだー。いいねえ」「おもしろいもの、見つけたねー。ステキだね」と声をかける。子どもが「できた!」とうれしくなったときには、「あ、できたねー。うれしいね。お母さんもうれしいよ」といっしょに喜ぶ。そんなちょっとしたやりとりを通じて、子どもは少しずつ「自分っていいんだな」という気持ちを育てていきます。それは、「もっとやってみよう」「自分はできる」というやる気や自信のもとになり、やがて「自分自身を信じることができる力」「自分が好きと言える力」へとつながっていきます。

もちろん、イヤイヤ期の子どもを育てていると、「いいね!」より「ダメ、ダメ」が多くなってしまう日もありますよね。「どうも最近は、ダメダメばかりかも」と気づいたときは、「1日1回は、『いいね』『ステキだね』『楽しいね』など子どもの気持ちに共感する言葉をかけるようにしよう」と、意識してみるのもいいかもしれませんね。

「評価」ではなく「共感」を大切に

自信を持たせるというと、「とにかく子どもをたくさんほめればいいの?」と考えがちですが、アドラー心理学では「ほめる」というより、「勇気づける」という考え方をします。  

たとえば「~してえらいね」「上手だね」という言い方だと、親が子どもを上から評価するようなかたちになってしまい、それが行き過ぎると、評価されることしかやらない子どもになってしまう場合もあります。

 自然な気持ちから「すごいね!」とほめることがあってもいいのですが、あくまでも「上から評価」ではなく、子どもの「できてうれしい!」という気持ちをいっしょに分かち合う、共感するという感覚を大事にしたいですね。

おすすめは、「親子でいっしょにいっぱい遊ぶこと!」

「自分のことが好き! と言える子に育てるために、何かできることは?」と聞かれたら、私は「ぜひ、お子さんといっしょに楽しく遊んでください」と答えます。子どもはなによりも遊ぶことが大好き! 自分がおもしろいなと思うことを、大好きなお母さんがいっしょになって「楽しいね」と共有してくれるというのは、それだけで大きな自信につながります。

お母さんにとっても、子どもといっしょに遊ぶことで、「うちの子はいま、こんなことに興味があるんだ」「こんな石ころひとつで、こんなに遊べるんだ」など、いろいろ発見できます。そして、「楽しいね!」という気持ちを共有することで、親子がつながる楽しさを実感できるでしょう。

ママ自身も「自分が好き!」と思えるゆとりを

子どものことをゆったりと見守るには、お母さん自身の気持ちにもゆとりが必要です。もともと人間は群れで子育てをする動物で、子育ては社会みんなで楽しむものです。まじめなお母さんほど、自分のことは後回しでがんばりすぎてしまうもの。だからこそ、地域の子育てサポートなどをどんどん利用して、ぜひママ自身がほっとひと息つける時間を作ってほしいなと思います。

坂本 玲子 Reiko Sakamoto

山梨県立大学人間福祉学部教授。医学博士。早稲田大学第一文学部、山梨医科大学医学部医学科卒。山梨医科大学医学部精神神経科、山梨県立女子短期大学を経て、現職。専門は、精神医学、精神療法(認知療法など)、アドラー心理学、睡眠に関する研究、おとなの発達障害。「子どもの心と脳の育て方」「勇気づけの子育て」などをテーマに、子育て関係の講演会や研修会講師としても精力的に活動している。

取材・文/中島恵理子