日常の中にひそむ危険をチェック!
知って防ごう、子どもの誤飲・誤嚥事故
お話 茂手木明美先生
転んだ、ぶつけた、口に入れた……などなど、小さな子どもとの暮らしは「ドキッ」「ヒヤッ」と縁が切れませんね。今回はどこの家庭でも起こる可能性のある「子どもの誤飲・誤嚥」について、注意したいポイントをまとめました。
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誤飲
幼児期になってもひきつづき目配りを
「誤飲(ごいん)」とは、食べ物以外の異物を飲み込んでしまうこと。誤飲事故が最も多いのは、手でつかんだものをなんでも口に入れてしまう生後半年~1歳ごろですが、それを過ぎてもまだまだ油断は禁物です。
子どもがどんなものを誤飲しているかというと、タバコ、くすり(飲み薬、塗り薬)、洗剤類、化粧品、ボタン電池、コイン、小さなおもちゃ(ボール、ビー玉ほか)など、どれも一般家庭の中に普通にあるものばかりです。
「わが家は危ないものはきちんとしまってあるから大丈夫」と思っても、子どもは日々成長しているので、昨日は手が届かなかったところに手が届いたり、開けたりできるようになることもあります。マニキュアの除光液など化粧品の誤飲は、大人が使っているものに興味を持つ2~3歳ごろに多く発生しているという報告もあります。
赤ちゃん時代に比べると物ごとの分別がだいぶついてくる一方で、知的好奇心から大人が「まさか」と思うようなことをやってしまう(できてしまう)時期でもあるということを、常に意識しておきたいですね。
誤嚥
身近な食べ物が事故につながることも
本来は食道の方に入るはずの食べ物が誤って気管のほうに入ってしまうことを「誤嚥(ごえん)」といいます。子どもはまだ咀嚼がうまくできないので、口に入れた食べ物をかみ砕かずに飲み込んでしまうことがあります。飲み込んだ食べ物が、のどの高い位置(咽頭)や気管につまると、窒息、呼吸困難などの事態を引き起こすことがあります。
誤嚥しやすい食べ物の特徴としては、「丸くてつるんとしているもの」(白玉だんご、ミニトマト、ぶどう、アメ玉など)、「かみ砕きにくいもの」(ピーナツ、豆類、グミ、こんにゃくゼリーなど)があげられます。節分の豆やチョコレートの中に入っているアーモンドなどのナッツ類も要注意です。
意外なところでは、パンも誤嚥の危険があります。かまずにぱくっと丸のみしてしまい、流し込もうと水を飲んだら水分でパンが膨張して、さらに詰まってしまうという事故も起きています。誤嚥事故とは無縁に思える食べ物でも、食べ方によっては窒息などの深刻な事故を招くこともあるので、気をつけたいですね。
誤飲・誤嚥を防ぐ環境づくり
禁止だけでなく子どもへの安全教育も大事
子どもの生活環境に危険がないかをチェックするのは大人の役目ですが、一方で子ども自身にも「何が危なくて、どういうことに気をつけなくてはいけないのか」ということを少しずつ学習していってもらう必要があります。
そのためには2~3歳になったら、ただ「ダメ」と禁止するだけではなく、「どうしてダメなのか」という理由説明を簡単な言葉で伝えましょう。たとえば薬に手を伸ばしてきたときは、「これは病気になったときだけ使うものだから、〇〇ちゃんは食べないのよ」というふうに真剣な表情と口調できちんと教えましょう(もちろん、一度で理解できるわけではないので、手の届かないところに保管することは大前提ですが)。
「座って食べる」「食べながらふざけない」「お箸を持って歩かない」などは、お行儀の面だけでなく、安全のためにもとても大事なことです。子どもが食事中にいすから離れてうろうろし始めたら、「歩きながら食べると危ないよ」と伝えて、「では、もうおしまいね」と食事を切り上げる。そんなふうにけじめをつけていくことが、子どもへの安全教育にもつながります。
家族みんなで確認! 誤嚥・誤飲を防ぐわが家のルール
・直径39mm以下の大きさのものは子どもが口に入れて飲み込む危険があります。
・特にタバコ、くすり、ボタン電池、小銭などは注意。
・歩きながら、遊びながら、寝転がりながら……「ながら」食べは危険です。
・びっくりすると人間はひゅっと息を吸い込みます。大笑いしたあとも同じです。
大人がやっているのを見て、小さな子がまねをすることもあるので気をつけて。
・大きな揺れや急停車で誤嚥するおそれがあります。特にピーナツやグミなどは与えないようにしましょう。
茂手木 明美 Akemi Motegi
西武文理大学看護学部小児看護学教授。医科学博士。山梨大学医学部大学院医学工学総合教育部博士課程終了。専門は小児保健、小児看護、保育学。「子どもの生活習慣と健康問題」「小児期の睡眠」「子どもの事故と安全」「子育て支援」などをテーマに教育・研究活動、研修会講師として活動している。
取材・文/中島恵理子