子どもの会話力を育てたい!
親子で楽しくおしゃべりしていますか?
お話 岡本依子先生
2~3歳にもなると、「おしゃべりがずいぶん上手になったな」と感じることがふえる一方で、「口で言っても通じない」「聞いても答えが返ってこない」など、子どもとのやりとりにむずかしさを感じることも。でも、ちょっとした工夫で親子の会話がもっと楽しくなるとしたら……そんな小さなヒントをご紹介します。
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親子の会話ってどうして大切?
“いつもの大人”とのやりとりが社会性や思考力を育てます
そもそも人間にとって、言葉って何でしょう? 言葉は人と人とがやりとり(コミュニケーション)をするためになくてはならないもの。また、人間は言葉を使ってものを考える生き物なので、言葉をはぐくむことは思考力を育てることにつながります。
言葉を使って人とやりとりをする中で社会性も身につく、考える力も身につくという意味では、言葉は子どもが生きていくための基礎をつくるものだと言えるでしょう。
子どもの言葉の力を育てるには、「言葉を使ってやりとりをする=会話をするって楽しいな」という経験を積み重ねていくことがとても大事です。<いつもの大人=ママやパパなど身近な大人>とのやりとりを通じて、「人とのやりとりって楽しいな」という気持ちが育ちます。それはこの先、子どもがより広い社会へと出ていく上でのお守りにもなります。
といっても、「子どもに正しい言葉がけをしなくては」などとむずかしく考える必要はありません。子どもの「カタコト」や「いいまちがい」など、幼児期限定のかわいいお楽しみも味わいながら、親と子の言葉のキャッチボールをたっぷりと楽しんでほしいなと思います。
子どもとおしゃべりするとき、どんなことに気をつけたらいいの?
言葉だけでなくスキンシップなどもプラスして
赤ちゃんに語りかける時は、表情を大げさにしてみたり、抑揚をつけてみたり、顔をのぞきこんだり、身体に手を添えたりと、言葉にプラスした働きかけを自然にしていたと思います。
言葉でのやりとりができるようになると、大人はつい「もう言葉だけで伝わる、口で言えばわかる」と思ってしまいがちですが、2~3歳くらいではまだまだ言葉を理解する力は発達途中。ママに叱られているときも、ママの言っていることはよく理解できないけれど、その表情や声色から「ママは怒っている」ということがわかるというようなこともよくあります。
特に年齢が低い子どもとのやりとりでは、言葉だけでなく表情やスキンシップなど「言葉以外の情報」もちょっとプラスしてあげると、やりとりがよりスムーズになります。
まずは「イエス」「ノー」で答えられる問いかけから
幼稚園から帰ってきて、「今日はなにしたの?」と聞いても、「わかんない」「忘れた」。特に男の子は年長さんまでそんな感じが続くこともあるようですね。幼稚園では1日にたくさんのことを経験するので、それをうまく整理して話すというのは、子どもにとってはとてもむずかしい作業。けっして、めんどくさいから答えないというわけではないのです。
こんな場合は、まず、イエス、ノーで答えられる問いかけから始めてみましょう。いきなり「何をしたの?」ではなく、「お外で遊んだ?」と聞いてみます。イエスなら、「そう。お外でなにをして遊んだの?」、ノーなら、「じゃ、お部屋で遊んだの?」とつなげていくと、子どもの頭の中に幼稚園での光景が思い出されてきて、「〇〇で遊んだよ」という説明ができるようになります。問いかけは「お絵かきした?」でもいいし、「〇〇ちゃんと遊んだの?」とお友だちの名前を出してみてもいいですね。
また、「AとB、どっち?」と子どもが選べるような尋ね方もあります。自分からあまりおしゃべりしない子には、「何して遊ぶ?」より、「お絵かきする? 折り紙がいい?」「お絵かき、クレヨンにする? ペンにする?」などと問いかけたほうが子どもは答えやすいので、やりとりがうまく続きやすいでしょう。
子どもの言葉をくり返してみよう
子どもが「〇〇ちゃんと遊んだ」と言ったら、「そうかー。○○ちゃんと遊んだんだね」とくりかえして言ってみます。すると、子どもは「あ、ママはこの話に興味を持ってくれたんだな」ということに気づいて、そのことをよりくわしく語ろうとします。
子どもにとって、大好きな人が自分に興味を持ってくれるというのはすごくうれしいこと。子どもの言葉をくり返すことは、「ママはあなたのそのお話をもっと聞きたいよ!」というサインになります。
ママ、パパ以外の人との出会いも少しずつ
会話力とは、つまりは「人とやりとりする力」なので、年齢に応じて人間関係も少しずつ広げていけたらいいですね。幼稚園や保育園の先生、おじいちゃんおばあちゃん、お友だちのママなど、家族以外の人たちとのふれあいをふやしていくことは、子どもの会話力、社会性を豊かにはぐくむことにつながります。
岡本依子 Yoriko Okamoto
立正大学社会福祉学部子ども教育福祉学科准教授。首都大学東京大学院にて博士(心理学)取得。専門は発達心理学(親子コミュニケーション、親への移行、地域子育てほか)。保育士の資格も持つ、自他ともに認める「赤ちゃんオタク」。子育て中のママの気持ちに寄り添ったあたたかなアドバイスが好評。
取材・文/中島恵理子