短い時間でも気持ちがしっかり満たされる!

安心で無理がない「おやこ時間」の作り方

お話 川島亜紀子先生

子どもと過ごすおうち時間。いつもベッタリは疲れてしまうけれど、放任も良くないと思うし。幼児期の子どもとの関わりって、どれくらい、どんなふうにしたらいいの? 子どもと親との「ちょうどいい関わり方」について、専門家の先生におたずねしました。

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園の先生たちに学ぶ「子ども対応」のポイントとは

一日中、子どもの相手をしていたら疲れちゃう。それはどんなママでもきっと同じ。あなただけではないので、まずは安心してくださいね。

幼稚園や保育園の先生のことを考えてみましょう。先生たちは、いつも子どもにくっついているわけではありません。でも、子どもが「せんせーい!」と声をあげると、次の瞬間には「どうしたの?」とその子のすぐ側で対応しています。

「必要とされるまでは放っておく」「必要とされたら、すぐに手の届くところまで近づいて対応する」「対応したら、また放っておく」という流れが完全にできています。

この流れができれば、子どもたちは、「困ったことがあっても先生を呼んだらすぐに来てもらえる」ということを学習しますから、安心して遊ぶことができます。

「呼ばれたら、こたえる。そばにいく」。家庭でもそれが基本です

これは、親子の関わりにも応用できます。

子どもに呼ばれたら、「何? どうしたの?」と子どもに手が届く距離まで近づく。

「見て、見て」と言われたら、そばに行って「どうしたの?」「それは何?」などと会話をする。内容にもよりますが、時間でいうと1~2分くらいでしょうか。

 何も特別ではなく、ごく当たり前のやりとりですが、こんな短い時間でも、親に言いたいことを聞いてもらい、やってほしい手伝いをしてもらえば、子どもはじゅうぶん満足します。

このとき大事なことは、「何かをしながら」ではなく、「今は、子どものためだけに時間を使おう」という意識を持つことです。「あなたのことはいちばん大事だから、いつでもちゃんと相手をするよ」という気持ちをしっかりと持つこと。そして、それが子どもに伝わるような関わり方を心がけたいですね。

手が離せないときは事前に説明しておくという手も

忙しいときに限って、子どもに呼ばれてイライラ……。どこの家庭でもよくある光景だと思います。

すでに言葉でのやりとりや約束が十分にできる年齢の子どもなら、手が離せない作業に入る前に、「今からママは〇〇をするから、5時(時計の針が5になる)まではすぐにお返事できないよ」「でも、おなかが痛いとか、何か困ったことがあったら呼んでね」などのように、具体的に伝えておくことも有効です。「終わったら、ゆっくりお話を聞くからね」と約束しておくことも、子どもの安心感につながります。

それがまだ難しい場合は、やはり親の方が子どもの要求に合わせていく必要があるでしょう。大人はつい「あとでね」といいがちですが、どうしても手が離せない状況って、実はそんなに多くはなかったりします。

「あのとき、ちゃんと子どものために時間を使っておけばよかったな」と、後から思うのはせつないもの。「子どもが求めてくるときに、1分でいいから楽しい時間をいっしょに過ごそう」、そんなふうにちょっと発想を切り替えてみるのもいいかもしれません。

「いつでもどうぞ!」とドンとかまえると、子どもは安心します

不思議なことに、親が「よし、私はいつでも子どもが望むときに対応する! 今日は子どもを最優先にする!」とかまえていると、なぜか拍子抜けするくらいに子どもの「見て、見て」「来て、来て」が減ります。「今忙しいのに」「うるさいなあ」と腰が引けているときほど、子どものグズグズはエスカレートするように感じます。

子どもと過ごす時間は大切と言っても、親はいつも子どものそばにいる必要はありません。子どもだって、ずっと親に密着されていたらイヤ。いてほしいときだけ、いてくれたらいいんです。

わがまま? 確かにそうですよね(笑)。でも、子どもは「自分が呼んだら、お母さんは見てくれる、来てくれる」というくり返しを通して、「自分はお母さんにとってそういう(大事な)存在なんだ」という感覚をはぐくんでいきます。

それは、これから少しずつ自立に向けて成長する子どもたちにとって、大事な心の土台になります。そう考えると、毎日の「見て見て、来て来て攻撃」もなんだか愛おしく思えてくるかもしれません。

川島亜紀子 Akiko Kawashima

山梨大学准教授。放送大学客員准教授。お茶の水女子大学大学院博士課程修了。公認心理師・臨床心理士。専門は夫婦・家族関係と子どもの発達に関する発達精神病理学的研究。幼稚園での保育カウンセラー、講演会講師など、子育て支援の現場でも活動。著書は『夫婦げんかと子どものこころ』(新曜社),助産学講座4「母子の心理・社会学」(医学書院)ほか。2児の母。

取材・文/中島恵理子