子どもも楽しい、大人も楽しい。
「がんばらない絵本時間」のススメ
お話/NPO法人山梨子ども図書館理事長 宮崎さなゑさん
よい絵本との出会いは一生の宝物。「親子でもっと絵本を楽しみたい」という声がある一方で、「なかなか読めなくて……」という声も。長年、子どもと本をつなぐ活動をされている先生に、忙しい暮らしの中で親子で無理なく絵本を楽しむヒントを伺いました。
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Q 絵本は読まなければならないもの?
美しい絵、磨き抜かれた言葉。子どものために心を込めて作られた絵本は、子どもの世界を豊かにしてくれるものであり、育ちの糧となる大切なもの。子どもの育ちの基本は、「よく寝て、よく食べて、よく遊んで」ですが、そこにちょっと彩りとしての絵本が加わったらいいなあと私は願っています。
絵本のページをめくりながら、親子でいっしょにここちよい言葉を楽しみ、美しい絵を楽しみ。そんなふうに幼い子どもと大人が「楽しいね」という気持ちを共有し合えるという点も絵本の大きな魅力。赤ちゃんをあやしたり、いっしょに遊んだりという親子の関わりの一つとして、絵本を手に取ってみてほしいなと思います。
Q 絵本を読むのが苦手。上手く読むコツはありますか?
お話会など集団を対象とした読み聞かせには一定の方法論のようなものがありますが、おうちでの読み聞かせには「こうしなければ」というルールはありません。大好きなお母さんお父さんが自分のために読んでくれる、そのことが子どもは何よりもうれしいのですから、どうぞラクな気持ちで読んであげてください。
付け加えるなら、家庭での読み聞かせでは、「どう読むか」よりも「何(どんな絵本)を選ぶか」が大事なポイントといえるかもしれません。耳から聞いた言葉をどんどん覚えていく乳幼児期だからこそ、磨き抜かれた美しい言葉でつづられた絵本を選ぶということも、ぜひ意識してみてくださいね。
Q 読み聞かせは毎日?
「毎日読めないんですけど」とおっしゃるお母さんには、「いいんじゃない?週に1回でも」と私は答えます。どのご家庭にもそれぞれの都合や生活がありますから、時間がないときや疲れているときは無理しなくていいんです。少し時間ができたとき、子どもと何して遊ぼうかなと思ったときに、「じゃ、絵本読もうか」。それくらいの気持ちで楽しんでみてはいかがでしょうか。
「夜は時間がないので、朝出勤前に1冊、子どもと絵本を読んでいます」というお父さんも。幼児向けの絵本なら1冊ゆっくり読んでも5分くらい。子どもといっしょに絵本を楽しむひとときは、忙しい大人の心をも少しゆるめて平らかにしてくれるような気がします。
Q 子どもが喜ぶ絵本がわかりません
うちの子にどんな絵本を選んだらよいのかわからない。そんな時はどうぞ図書館を頼ってみてください。図書館には「児童担当」の司書さんがいるので、たとえば「3歳の男の子で、乗物が好きです」などと情報を伝えて、興味に合いそうな絵本を選んでもらうこともできます。あまり知られていませんが、本の貸出だけでなく、本選びの相談に乗ることも図書館の人のお仕事なんですよ。図書館には書店には並んでいない絵本もたくさんあるので、きっと好みに合う一冊に出会えると思います。
おすすめ!
『今、この本を子どもの手に』
(東京子ども図書館)
子どもの本選びに迷った時、信頼できるブックガイドがあると安心。絵本からノンフィクションまで計1000点を紹介。対象年齢は幼児から中高生まで。
Q 子どもが途中で飽きてしまいます
大人はきちんとページをめくって最後まで読みたい。でも、子どもは好きなページだけパラパラ見て満足。そういうこともありますよね。もし、子どもが途中で飽きたら、そこで「はい、おしまい。面白かったね」とにっこり笑って切り上げる。そんな感じでいいんです。たとえ1ページでも2ページでも「いっしょに楽しめたね」といううれしさは残るでしょう? その満足感を大切に味わいたいですね。
Q うちの子、絵本に興味がないみたい
絵本への興味を育てるには、なによりもまず身近に絵本があることがいちばん。目につくところになんとなく絵本があるという環境を用意してあげましょう。赤ちゃんならおもちゃ感覚で遊べる丈夫な厚紙絵本を用意する、少し大きくなったら図書館で興味を持ちそうな絵本を何冊か選んで借りてきてもいいですね。もし読まなくても、そのまま返せばいいと思えば気楽でしょう?
すぐれた絵本は大人が読んでも面白いので、まずはお母さんやお父さんが一人で読んでみるのもおすすめ。親が何か楽しそうに読んでいる姿を見たら、子どもは気になって「何してるの?」とのぞきにくるかもしれません。
宮崎さなゑ Sanae Miyazaki
NPO法人山梨子ども図書館理事長。「図書館ボランティアやまなし」代表。子どもの本の専門家の養成を活動の中心とする「山梨子ども図書館」(2005年設立)理事長として、絵本講座、読み聞かせ講座などの講師を務める。読書ボランティアとしても1996年より「ピッピの会」で活動。ストーリーテリング、読み聞かせ、ブックトークなどを通じて、長年にわたり地域の子どもたちや保護者との交流を重ねている。
取材・文/中島恵理子