気持ちは受け止めつつ、しつけもしっかり!

子どもの気持ちに寄り添うかかわり方のヒント

お話/日本抱っこ法協会公認ホルダー 阿部優美先生

「子どもの気持ちに寄り添ってと言われるけれど、これでいいのかなと迷うときも…」という声も。そこで今回は「子どもの気持ちに寄り添うかかわり方」について、専門家の先生にやさしく解説していただきます。

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Q. そもそも「気持ちに寄り添う」ってどういうこと?

気持ちに寄り添うとは、「相手の気持ちを受け止めて、共感すること」。たとえば、子どもがニコニコ楽しそうに遊んでいるときは「うれしいね」、転んで泣いたときは「びっくりしたね。痛かったね」など、その時々の子どもの気持ちを想像して、共感して、それを言葉や表情で伝えてあげること。それが気持ちに寄り添うということです。

Q.「子どもの気持ちに寄り添う」、どうして大切なの?

気持ちに悪いものはありません。たとえば2~3歳児がお得意の「イヤ!」にだって「そうか。イヤなんだね」と寄り添ってあげてOKなのです。

どんな気持ちも認め、受け止めてもらうことで、子どもは少しずつ「自分のいろいろな気持ち」に自分自身で寄り添うことができるようになります。それが自己肯定感につながります。

Q. 気持ちに寄り添ってばかりではわがままにならない?

「子どもの気持ちに寄り添う」と「子どもの要求を受け入れる、言いなりになる」とは全く別のこと。ここはとても大事なポイントです。

たとえば、公園遊びで「もう帰るよ」と声をかけても、子どもは「ヤダ! まだ遊びたい」という場合。「まだ遊びたい」という気持ちには「そうだよね。もっと遊びたいよね」と寄り添ったうえで、「でも、もうごはんの時間だから今日はここまでね」とできない理由をシンプルに伝えて、行動を促しましょう。

子どもの気持ちは100%聞くけれど、安易に「しつけの枠(ルール)」は崩さない。これが「子どもの気持ちに寄り添いつつ、子どもの言いなりにはならないかかわり方」の基本です。

「自分の気持ちをコントロールする練習」を少しずつ

子どもの気持ちを大切にと思うと、「親が決めた都合を無理じいしていいのかな?」とためらう気持ちがわいてきて、つい枠をゆるめがち。そんな声もよく聞きます。

もちろん日々の子育ての中では、親がちょっと譲歩したり、「今日は特別ね」ということがあってもいいのですが、子どもがイヤイヤするたびに親がグラついていては、子どもの中に「自分の気持ちをコントロールする力」が育ちません。

「今日はここまで」と決めた時間になったら、子どものヤダにひるまず、「もっと遊びたいよね。帰るのヤダよね」と気持ちを代弁しつつ、手を引いて(あるいは抱っこで)ヤダヤダの気持ちは体でも受け止めつつ、しっかり連れて帰りましょう。

目指すイメージは「信頼できるボス」

子育て中の親が目指すイメージは「信頼できて頼りがいのあるボス」。頼もしいボスは部下の言うことにいちいち流されたりはしませんよね。うんうんと話は聞いてくれて気持ちもわかってくれるけれど、でも間違ったときはきちんと注意してくれて、やがて立派に独り立ちできるよう導いてくれるはず。子どもとのかかわり方に迷ったときは、そんなふうに考えてみてはいかがでしょう?

わかっているけど、子どもに寄り添えない。そんなときは…

自分の気持ちに余裕がないときには、人の気持ちにも寄り添えないもの。子どもの気持ちをうまく受け止められないときは、「もしかしたら、私、いま余裕がないのかも」とご自分を振り返ってみてください。ゆっくり話を聞いてもらったり、愚痴をこぼしたり。誰かに気持ちを受け止めてもらえるだけでほっとして元気になるのは、大人も子どもも同じです。

阿部優美(あべ・ゆみ)

日本抱っこ法協会公認ホルダー、言語聴覚士。「心を育てる抱っこの会」メンバー。子育てに悩むお母さんの相談を中心に、3歳児健診、保育園の巡回相談、発達相談などに携わるほか、子育て関係の講演、保育・福祉に携わる職員研修など精力的に活躍中。心の相談室『とうげのちゃや』(東京・府中市)主宰。

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取材・文/中島恵理子